【初期研修医向け】興味がない科をローテートするときの心構え

研修医向け

 インデックス医です。

 2週間ほど前に、「初期研修の目標は初期研修を終了することです」という記事を投稿しました。

 そこでは、初期研修を終えるための心構えや、休暇の使い方などを紹介しました。

初期研修を終えるという、最後の目標はわかっていても、そこにたどり着くまでに多くの試練があります。

 その代表的なものが、興味のない診療科のローテートですね。

 特に初期研修終了後の進路が明確に決まっていればいるほど、自分の進路と関連性の低い診療科のローテートに対してモチベーションが上がらないのは、ある意味ごく自然なことではあります。

 私自身も、初期研修開始時から整形外科医になることを決めていましたので、正直、血液内科などはローテートする前はモチベーションは低かったです。(血液内科の先生方すみません)

 そんな私でも、研修医2年目になり、このまま行けば無事に初期研修を終えることはできそうです。

 そこで本日は、私が興味がない科のローテートをする前に行っていた準備や考え方を紹介します。

 特に研修医1年目の先生方には読んでいただきたいです。

まとめ

 早速ですが、本日のまとめです。

・なぜ必修科というのが設定されているのか
・興味のない科でもやる気を出すための方法
・それでもやる気が出ないなら

順に見ていきましょう。

なぜ必修科というのが設定されているのか

 なぜ必修科なんて存在するのか、という点を掘り下げるにあたり、根本的に初期研修の目的、あり方というのを考えてみます。

 厚生労働省HPを見ると、現在の初期研修2年間が必修となったのは、約17年前の平成16年からというのがわかります。

医師臨床研修制度の変遷
必修化の背景
・地域医療との接点が少なく、専門の診療科に偏った研修が行われ、「病気を診るが、人は診ない」と評されていた。
・多くの研修医について、処遇が不十分で、アルバイトをせざるを得ず、研修に専念できない状況であった。
・出身大学やその関連病院での研修が中心で、研修内容や研修成果の評価が十分に行われてこなかった。
研修の必修化
 医師の臨床研修の必修化に当たっては、
・医師としての人格を涵養し、
・プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得するとともに、
・アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備することを基本的な考え方として、制度を構築してきた。
 
厚生労働省HPより抜粋 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/hensen/

 上記のような目的で現在の初期研修は必修化されたようです。

 この中で私たちを苦しめているのは、研修の必修化の項目の、「プライマリ・ケアの基本的な診察能力の習得〜」という点でしょうか。

 これにより、国により決められている必修科があり、さらに研修先の病院によっても様々なルールがあり、そのルールにしたがって研修をしなければなりません。

 ただし、文句ばかり言ってられないというのも事実で、基本的に現在の研修医は給与は一定額以上で安定しており、昨今の働き方改革に合わせて働き方の権利もある程度守られていることが多いです。

 これは研修の必修化の最も下の、「アルバイトせずに〜」という文言があるおかげです。

 こうして見てみると、私たちは厚生労働省に縛られ、そして守られて、働いているようです。

 しかし、守られているが故に、自由がきかないというのも確かです。

 初期研修終了後の進路は、ほとんどは後期研修に進みますが、行政関連、美容などの自由診療、一般企業などを志す研修医も増えているのが現状です。その中で、臨床医として働かないときめていたりすると、モチベーションを保ちにくいのも事実でしょう。

 現行の初期研修の制度から、働き方の多様性の時代に合わせた制度の修正を願いたいものです。

 このように初期研修の成り立ちの一部を知ることで、初期研修という制度をより深く理解することが出来、必修科が出来た背景、そして、私たち初期研修医が守られている、というのがよくわかりますね。

興味のない科でもやる気を出すための方法

 さて、興味のない科でもやる気をだし、少しでも有意義に過ごす方法を紹介します。

興味のない科でもやる気をだす方法 その①自分の進路との関連性を見出す

 研修医の中でも、ある一定数は3年目以降の進路が決まっています。

 進路が明確に定まっていればいるほど、そのほかの科でのモチベーションの維持は難しいことがあります。

 そういった人がモチベーションを保つには、自分の進路との関連性を見出すのが、手っ取り早いかもしれません。

 例えば、整形外科志望であれば、手術に関連のある麻酔科や糖尿病内科、感染症内科、循環器内科などは、せめて周術期に関連した内容だけでも身につけようとすれば良いかもしれません。

 内科志望なら、joslerという後期研修プログラムの症例集めだと思えば、少なくとも半年ほどの内科研修はモチベーションを保てるかもしれません。

 進路が明確に決まっている人は、指導医との会話でもそれを無理に隠す必要はないでしょう。

 経験談ですが、私たちの意思がはっきりしている方が、指導医も指導に対する熱量を変えてくれることがあります。(希望の診療科との関連性が高い部分を重点的に指導してくれる、もしくは無理にローテート科特有の部分の内容には踏み込んだ指導をしてこなくなるなど)

興味のない科でもやる気をだす方法 その②その診療科の教科書を1冊読む

 これは、嘘だと思って一度やって見てほしい方法です。

 興味のない診療科のローテート前でも、始まってからでも構いません。1冊でいいので、教科書を流し読みして見ましょう。自分でお金を出して買うと尚更いいです。

 この1冊の読書つまり、その診療科の勉強のために時間を割くことが重要で、
 自分が時間と労力を割いたことにより、それを無駄にしないようにと、自然とモチベーションが生まれてしまうのです。

 これは行動経済学的には「サンクコストバイアス」といって、自分が労力をかけた事に対して、それがたとえ非合理的にでも意味を見出してしまったり、撤退できなくなる心理のことを言います。身近なところで言えば、ソーシャルゲームに課金すればするほどハマってしまうのも、このサンクコストバイアスの影響があります。

 人の心理の癖である「サンクコストバイアス」を利用して、ローテートを少しでも心理的に楽に乗り切れるようにしようというのが、この方法です。

 1冊でもいいので、教科書なり、関連のある書籍なりを手に取ることで、1ヶ月のモチベーションは大きく変わります。

 ぜひ試してみてください。

興味のない科でもやる気をだす方法 その③ただひたすら耐える

 これはすでに方法論でもなんでもないのですが、とにかく耐えて、時が過ぎるのを待つというのも一つの手です。

 冒頭で紹介した「初期研修の目標は初期研修を終了することです」の記事でも書いたのですが、研修の途中である一定数がドロップアウトしてしまうというのが現状です。

 興味もなく、忙しいが故に心身の状態が乱れてドロップアウトしてしまう、そんなことになると、私たち自身にとってはもちろん、医療界全体にとってもマイナスでしかありません。

 ですので、仕事はほどほどにして時間が過ぎるのを待つ、思い切って休む、というのも手です。

 そもそも研修医がいなくても病院自体は機能するのが基本ですので、我々研修医が一人休んだところで、病院の機能には大きな問題はないです。

 それでも耐えられないようなら、休んでしまうのも一つの手です。例えば、有給休暇を10日ほど使えば、1ヶ月のローテートのうち半分は過ぎます。現実には、本当に心身に支障をきたすような状態なら、研修先病院にいる産業医に相談して、病欠として休むことができるでしょう。

 面倒くさいから仕事を休む、というのは自身の信用のためにもおすすめできない行為ですが、心身に問題が生じるような状態で働き続けるというのは、自分にとっても病院にとっても健全な状態ではありません。『初期研修の目標は初期研修を終了するすることですので。

まとめ

 ふたたび本日の結論です。 

・研修医は、必修科目の設定など自由度は低い。しかし、その代わりに、一定水準の労働環境と給与が保証されている、『守られた存在』である

・興味のない科目でもやる気を出すには
→①自分の進路との関連性を見出す
→②その診療科の教科書を1冊読む(サンクコストバイアスを利用する)

・時には無理せず休むことも重要

 最終目標は、初期研修を終了することです。それを念頭に、興味のない科をローテートする時にも自分なりに工夫してモチベーションを保てるのが理想ですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました