【新社会人向け】給与明細をみればお金に関する社会の仕組みがわかります

研修医向け

インデックス医です。

4月半ばから、5月にかけて新社会人の皆さんは初めて給与を頂くと思います。初めて自分で稼いだお金というのは大事に感じるかもしれませんね。家族へ何かプレゼントをしたり、大事な友人との食事代に使ったりと、単なる浪費とは違った使い方ができると豊かな生活になるかもしれません。
さて、初めていただいた給与と同じくらい重要と言ってもいいのが、一緒にもらう給与明細です。本日は給与明細の見方を解説しながら、税金に関する知識をお伝えしたいと思います。
わたしの同僚もはじめて給与明細を見た時はまじまじと眺めていましたが、難しい言葉の多さに心が折れ、給与明細の額面の給料と、手取りの金額の部分のみを確認するだけになっているみたいです。

給与明細は確かに、ものすごく見づらいです。わざと難しくしているんじゃないかと言いたくなるくらいです。しかし、それは私たちが勤めている勤務先が悪いのではなく、根本的なルールを決めている国のせいです。病院や会社はそのルールにのっとって給与明細を作っているだけなのです。

給与明細を見れば自分がどれだけの税金を払っているかや、どうやって税金が計算されているかが見えてきます。将来お金に困りたくないのであれば、税金の基本の勉強ができる格好の教材である給与明細を読めるようになりましょう。

それでは順を追ってみていきましょう。

①額面と手取り

まずは、誰もが一番気になるであろう額面と手取りの給与がどういう名目で記載されているのかからみていきましょう。

基本的には、いわゆる額面の給料と言われる税引前の給料。これは一般的には総支給額、支給額合計といった記載がされます。一般的に年収、月収というと、この税引前の支給額を言うことが多いです。クレジットカードの審査や、住宅ローンの審査など年収と属性が重視されるような場面ではここの総支給額をもとに審査されます。

税金を引かれ、私たちが実際に受け取る、いわゆる手取りの給料については、差引支給額と記載されることが多いです。私たちの銀行口座に振り込まれる金額はこの部分で確認できるので、もし差引支給額に記されている金額と振り込まれた金額に違いがある場合は、事務の方に間違いがないか確認した方が良いですね。

②控除とは

税金を知るうえで、何度も出てくる言葉「控除」
実はこの控除という言葉は場面によって、私たちにとってありがたい控除と、そうでない控除が混在しています。そのせいでパッとイメージがしにくくなっています。

「控除」という単語自体には金額などを差し引くという意味があります。つまり、数学で言うなら−(マイナス)と一言で済むのですが、税金においては、何をどこから差し引くのかが状況によって変わってくるので難しくなるのです。

少し給与明細からは外れてしまいますが、節税の方法として有名なふるさと納税では、制度上は、寄付金控除というものになります。ある地域に寄付をすることで、その一部を額面の給料から先に引いてあげます。つまり、その部分には税金がかからなくなる、私たちにとってありがたい方の控除となります。

さて、ここで給与明細に話を戻すと、給与明細には私たちにとってありがたくない方の控除が書かれています。それが、社会保険料や所得税、住民税などの法定控除です。
法定控除、または単に控除とだけ書かれている部分があると思います。その金額が私たちが払っている源泉徴収された税金なのです。

③控除(税金)の内訳

さて、法定控除の部分が私たちが払っている税金なのですが、具体的な項目と内訳も記載されていると思います。以下が法定控除に記載されている項目です。

1.健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険
2.所得税
3.住民税

ここにさらに社会保険料計と記載されていると思いますが、これは1.の部分の4つを合わせたものです。1-3(つまり、社会保険料、所得税、住民税)を合計したものが法定控除の金額と一致しているはずです。

ちなみに、3の住民税に関しては前年の所得に対し税金がかかるので、社会人1年目の方は0円です。

さらに、法定外控除という項目がある方もいるかもしれません。一般的には労働組合費や、財形貯蓄などが含まれるのですが、医師であれば医局費が、ここに記載されている方もいるでしょう。
この法定外控除というのは、その病院や会社など組織に対して払う項目ですので、手取りから引かれている項目です。税金とは切り離して考えてもらっていいいです。

④社会保険とは

社会保険料として私達が税金を納めることになっているのは以下のとおりです。

①健康保険
②厚生年金保険
③介護保険
④雇用保険

狭義の社会保険というと①〜③を指すことがあるのですが、給与明細上は同じように扱われることの多い雇用保険もまとめて考えても大丈夫です。

④−1. 健康保険とは

労働者または被扶養者の疾病や負傷、死亡、そして出産に関して保険給付を行うのが健康保険の役割とされています。

身近なところでいうと、子供を出産したときに申請することでもらえる出産育児一時金などの制度はこの健康保険により成り立っています。また、病気や怪我で一時的に働けなくなった場合に給料の何割かをもらえる傷病手当金などもそうです。
このような給付金は自ら申請しなければもらえないものも多いので、知っているか知らないかで大きな違いがあります。
この健康保険があることで、民間の生命保険に加入せずともある程度の有事には対応できます。あまり意識しないかもしれませんが、私達はすでに保険に加入しているのです。

④−2.厚生年金保険とは

労働者の老齢、障害、死亡について保険給付を行うのが厚生年金保険です。

厚生年金と聞くと、年金の2階の部分というのを聞いたことがある方も多いでしょう。確かに、厚生年金保険は年金として、老後を守ってくれるイメージは強いかもしれません。(最近は老後2000万円問題等いろいろ叫ばれてはいますが、)

ただ、これは労働者の老齢についての給付であり、障害と死亡についてはまた別の保証があります。

例えば、サラリーマンが若くして家族を残して亡くなった場合には、残された遺族には、遺族年金というものが給付されます。その金額は保険料を納めた期間等によるのですが、この遺族年金のいい点は、勤続年数25年以下の人がなくなった場合には25年間働いたという仮定のもとに金額が決定するのです。
極端な話、働き始めて1年で亡くなったとしても、25年間働いたものとして家族に遺族年金が払われるのです。

先程も言いましたが、このように様々な保険制度が整っている日本では民間の生命保険などは基本必要ない、加入するにしても最小限でいい、というのが私の見解です。次の記事にまとめています。
医師でFP資格保有者である私が考える医療保険は掛け捨て以外入らなくていい理由

④−3.介護保険とは

介護保険は、介護を事由として給付される保険とされています。

医師国家試験の公衆衛生分野でも勉強したように、40歳から保険料を納付する義務が生じ、いわゆる要支援、要介護などに認定された場合に、様々なサービスを受けることができるようになります。医師であれば、実務上でも関わるため、より身近な制度かもしれませんね。

④−4.雇用保険とは

雇用保険は、労働者の失業などの事由に対し、給付が行われるものです。

失業手当(失業保険給付)という、何らかの理由で仕事を辞めた場合に要件を満たしていれば給付を受けることができます。
病気や怪我に対する健康保険に加えて、日本には仕事をやめている期間ですらある程度の生活が保障されているのです。ここまで手厚い保険としてのシステムが整っているのは世界を見回してもほとんどないでしょう。

さて、ここまでで社会保険については終了です。自分にもしものことがあった時にここまで手厚く保障がされているということを理解すると、日本の社会保険制度は非常に良くできたものだということがわかりますね。社会保険のメリットを知らないと、ただ税金を取られているだけのような気がして納税に対してマイナスなイメージばかり生まれてしまうものですが、保険としてはむしろ安いんじゃないかと思う人もいるのではないでしょうか。

さて、ここから残りの所得税、住民税ですね。

⑤所得税

所得税は、その名の通り所得に応じて私たちが国に納める税金です。病院や会社の社員であれば、給与として振り込まれる前に所得税を差し引かれます。

税率は、所得が高くなればなるほど税率も高くなる累進税率が採用されており、最大45%です。以下の表で自分の税率がどれくらいかわかります。

国税庁HPから抜粋した表を見ると、例えば所得が190万円と、200万円では、
190万円の人は190万×5%の9.5万円なので、手取りが180.5万円
200万円の人は200万×10%の20万円なので、手取りが180万円
10万円の所得の差がありながら、税引き後はほとんど手取りが変わらない!ということになってしまい、それなら働かない方がいいじゃないか、理解をされることが多いです。

しかし、実はこの理解は間違っています。正しくは、表の一番上の194.9万円までの分の所得は税率5%が全員に適用され、それを超えた分だけが10%以上の税率となります。言葉だと伝わりにくいので、先程の190万円と200万円の場合の比較をもう一度正しい計算でしてみます。

所得が190万円の人はもちろん計算はさきほどと変わらず、190万×5%の9.5万円なので、手取りが180.5万円
所得200万円の方は、所得税は195万円×5%+(200万円ー195万円)×10%で10.25万円と計算され、手取りは189.75万円となります。

このように、当たり前ですが、所得が高い人の方が手取りももちろん多くなります。
実は実際の今回は省略しましたが、復興特別所得税という税金がここに加えてかかってきます。

ちなみに、表の一番右の控除額という項目ですが、これを利用することで、税率が10%以上の方も簡単に所得税額を計算することができるようになっています。
所得税額=所得×当てはまる税率−控除額
またまた200万円で計算すると、200万円×10%ー97,500=10.25万円
先程の計算と一致しますね。
このように控除額の部分を使うと簡単に税額を導くことができます。

所得税についてなんとなく、どの程度の税金を払うことになっているのか少しは理解いただけたのではないでしょうか。

⑥住民税

さて、最後は住民税ですが、こちらは国に納める所得税と違い、地方に納める税金です。
具体的には、都道府県と市町村それぞれに納める、「都道府県民税」「市町村民税」となっています。

税率はだいたい10%と理解していただいて大丈夫です。実際の計算は非常に煩雑になるので、理解する必要は正直ないです。

住民税について、地域差があるというのを聞いたことがある方もいるかもしれません。厳密には確かに、全国一律10%かといわれると、そうではありません。といっても1/100%以下の本当に誤差の範囲での違いです。手取りに大きく差が出るような地域はないので、忘れてもらっていいです。国民健康保険の方は地域差がありますが、これは加入する保険組合の種類によっても変わってくるのでそう単純な話でもないです。そもそも勤務医であれば関係ないので税金の地域差は変に気にする必要はなさそうです。

まとめ

給与明細を使って、社会保険料、所得税、住民税について説明してきました。資産形成をするにあたって、税金を少しでもコントロール出来ることは非常に重要なことです。そのためにも基本的な税金の知識は身につけておいて損はありません。研修医1年目の方は給与明細をみながら、もう一度この記事を読んでいただけるとよいかもしれません。

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